悪役令嬢は全力でグータラしたいのに、隣国皇太子が溺愛してくる。なぜ。
 それにへレーナ甘いものばかり食べているのも決め手だった。宮田さんは甘いものより塩気のあるものが好きで、煎餅をよく食べていた。男性社員の前ではマカロンなどのかわいらしいお菓子を食べていたけれど。
 つまり塩分を取りたくない、もしくは取れなくなっているのだと思った。

 だからレイチェル様に頼んで大量の塩を用意してもらったのだ。
 もし効果がなくても、これだけの塩をぶっかけたら意表をつけるから、その隙に逃げようと思っていた。

 私は塩が届きリンクたちに託してから、帝都の街へと出た。

 やがて黒くドロドロになった塩に塗れて姿を現したへレーナは、肌から水分がなくなり色褪せたミイラのようになっていた。艶々だったピンクブロンドの髪もパサパサで、湖のような瞳は白く濁っている。

「な……なんで、消えちゃった……闇の力が……ひっ!」

 へレーナは自分の枯れ木のようになった手を見て、短く悲鳴をあげる。骨と皮だけになった指先で顔に触れ、以前と違う様子に気が付き絶叫する。

「いやあああ!! なにこれ!? どうなってるの、ねぇ! 闇の力も使えないんだけど、なんでぇ!?」

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