悪役令嬢は全力でグータラしたいのに、隣国皇太子が溺愛してくる。なぜ。
「与えた分を返してもらうのは、当然の権利じゃない」
「お前はそれ以上に奪っただろうが。そのしっぺ返しが来たんだよ」
「なにも奪ってないから! だからこんなの理不尽なんだってば!」

 騎士たちが呆れたようにため息をつく。その後は私がいくら文句を言っても返事すら返してくれなかった。そうして最下層まで下りて、蝋燭の光だけが灯る無骨な通路を延々と歩かされた。

 いい加減文句を言うのも疲れて無言で騎士の後をついていく。

 やがてひとつの牢屋の扉が開かれた。ひとりの騎士が蝋燭に火を灯すとくたびれたベッドと、錆びついたバケツ、それからボロボロの机と椅子がオレンジ色の光に照らし出される。

「ほら、入れ。ここがお前の部屋だ」

 扉の前に立つ騎士が私を押し込むようにして牢屋の中へ入れた。足がもつれて転んでしまい、蝋燭をつけ終わった騎士の足元に手をつく。

「そのまま動くなよ」

 そういうと私の首についている魔道具へなにか嵌め込んだようだった。カチリと小さな音がしたかと思うと、途端に全身から聖なる力が吸い上げられる。
 自分の意思とは関係なく奪われる感覚は、想像を絶するほどの苦痛をもたらした。

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