悪役令嬢は全力でグータラしたいのに、隣国皇太子が溺愛してくる。なぜ。
「あっ……あああああっ!」
「これで、お前の聖なる力は世界中に拡散される。よかったな、世界中からは聖女様のおかげだって崇められるぞ」
「あうっ……うう、ううう……」

 痛くて、苦しくて、息もしづらい。動くことなんてできなくて、冷たい牢屋の床にうずくまるしかできない。

「一日三度は食事が運ばれる。部屋の掃除は朝食の時だ。他は誰も来ないから好きにしろ」

 騎士たちはそう言葉を残して、牢屋から去っていった。

 延々と続く苦しみに、今が朝なのか昼なのかわからなくなる。食事を持ってこられても(ろく)に食べられない。それでも食べなければ飢え死にしてしまうので、歯を食いしばりながらなんとか食べ終えた。

 やっと塩気のある食事ができた。闇の力を使っている間は、塩気のある食事は受け付けられず甘いものばかり食べていた。

 どうしてこうなってしまったのか。
 ふと先輩の声が蘇る。あの時の先輩はとても優しく微笑んでいた。

『宮田さん、失敗してもいいからきちんと謝って。次は同じ失敗をしないようにすればいいから』

 失敗したんだ。私は聖女として失敗した。

「ごめ……んなさい……ごめっ、あああ!」

 言葉にできなくて、何度も心の中で謝ったけど、もう私を許してくれる人はいなかった。


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