悪役令嬢は全力でグータラしたいのに、隣国皇太子が溺愛してくる。なぜ。
気ままに馬車に乗り好きなところで降りて、なんの計画も立てずに宿を取った。
その土地の名物を食べたり、美しい水晶の館や、絶景と言われる虹色の湖を見に行ったりした。疲れたら宿でダラの時間を過ごし、帝国内を転々として歩いた。
そんな旅を続けて二週間が経とうとしていた。
その日、宿の食堂で朝食を食べていると、宿屋の女将が主人と話しているのが耳に入った。
「ええ! ついに皇太子様が婚約するのかい!」
「そうらしいぞ。なんでも隣国の貴族のお嬢様だってよ」
「へえ。そりゃあ、めでたいね! 結婚式には隣国からもお客さんが来るかもしれないねえ!」
フレッドが婚約……そうか、もうバスティア王国から戻ってきたんだ。隣国の貴族令嬢というと、やっぱりイリス様と結ばれたのか。
それなら、こうして離れて正解だった。私がいたら、フレッドの恋路を邪魔してしまうところだった。
目頭に熱いものが込み上げてきたけど、瞬きしてやり過ごす。何度も大丈夫だからと自分にいい聞かせた。
それから数日間は宿に引きこもった。泥沼に沈んでいくような気持ちをそのまま受け止め、なにもせずに無気力な状態で時間は過ぎていく。
その土地の名物を食べたり、美しい水晶の館や、絶景と言われる虹色の湖を見に行ったりした。疲れたら宿でダラの時間を過ごし、帝国内を転々として歩いた。
そんな旅を続けて二週間が経とうとしていた。
その日、宿の食堂で朝食を食べていると、宿屋の女将が主人と話しているのが耳に入った。
「ええ! ついに皇太子様が婚約するのかい!」
「そうらしいぞ。なんでも隣国の貴族のお嬢様だってよ」
「へえ。そりゃあ、めでたいね! 結婚式には隣国からもお客さんが来るかもしれないねえ!」
フレッドが婚約……そうか、もうバスティア王国から戻ってきたんだ。隣国の貴族令嬢というと、やっぱりイリス様と結ばれたのか。
それなら、こうして離れて正解だった。私がいたら、フレッドの恋路を邪魔してしまうところだった。
目頭に熱いものが込み上げてきたけど、瞬きしてやり過ごす。何度も大丈夫だからと自分にいい聞かせた。
それから数日間は宿に引きこもった。泥沼に沈んでいくような気持ちをそのまま受け止め、なにもせずに無気力な状態で時間は過ぎていく。