悪役令嬢は全力でグータラしたいのに、隣国皇太子が溺愛してくる。なぜ。
「解雇状……!?」

 手紙には最後の主人の命令として目の前にいる女性騎士はなにも悪くないので決して処罰するな、その後に俺を専属護衛から解任すると書かれている。

「今すぐ城に戻る。お前たちはそれぞれのペースで戻れ」

 それだけ言い残して、馬を走らせた。

 俺の頭の中には、なぜ、どうして、待っていると頷いたのに、そんな言葉が駆け巡っていた。



 皇城まで不眠不休で馬を乗り変えながら、三日で戻ってきた。
 真っ先に皇太子妃の部屋へ向かう。侍女がユーリは自宅に帰っていると言ったが、部屋の様子を確認するために足を踏み入れた。

「やはり……ユーリの私物がないな」
「えっ、どういうことでございますか?」

 侍女は俺が戻るまで、誰も部屋に入れるなと命じられたのだと話した。部屋にあったミカエラ宛の手紙を頼み、今度は帝都にある自宅に向かった。

 間に合ってほしい、まだそこにいてくれと願いながら自宅の扉を勢いよく開ける。
 俺とユーリで過ごした平穏な日々が甦って、今にも『随分早く帰ってきたのね』と言いながらユーリが現れそうだった。

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