悪役令嬢は全力でグータラしたいのに、隣国皇太子が溺愛してくる。なぜ。
 それから半年後、新しい護衛騎士がやってきた。

「フレッド・フォードと申します。本日よりユーリエス様の専属護衛として配属されました。よろしくお願いいたします」
「そう、よろしくね。早速だけど、今日の午後は出かけるから、護衛をお願いするわ」
「承知いたしました」

 艶のある銀の髪はサラサラで、サファイアみたいな瞳はどこまでも透き通っている。騎士だけに鋭い眼差しで、高い鼻と適度な厚みのある唇がバランスよく配置され、かなりの美形だ。
 なにも喋らないと整った顔立ちも相まって冷酷な印象を受けるけれど、言葉を交わせば細やかな気遣いもできる心優しい人だとすぐにわかった。

 それからフレッドと打ち解けるまでに時間はかからなかった。帝国出身で妹がいるということくらいしか知らないけれど、剣の腕は相当だし立ち居振る舞いもスマートだ。馬車から降りるときは必ず手を添えてくれるのが、こなれている。

 フレッドが姿勢よく立っている姿は隙がなくて、綺麗だった。しっかり護衛してくれているため、しょっちゅう目が合う。最近ではそのたびに優しく微笑まれて、ドキドキしてしまうけど相手は仕事なのだ。せっかくなので目の保養にして、こっそり楽しんでいた。

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