悪役令嬢は全力でグータラしたいのに、隣国皇太子が溺愛してくる。なぜ。
それから俺は一度皇城へ戻り、ユーリが後戻りできなくなるよう外堀を完全に埋めることにした。
皇帝の執務室へ約束もなく訪れると、体調がよくなったのか母上も政務をこなしていた。ちょうどいいと思いつつ、文句を言いたそうな父上を無視して用件を告げる。
「父上、早急に俺とユーリの婚約を発表してください」
「おお! そうかそうか、それでは婚約宣誓書にサインを——」
「それはまだできません」
「なぜだ?」
俺の言っていることがチグハグで、父上が鋭い視線を向けてくる。ここは誤魔化しても仕方ないので正直に話すことにした。
「ユーリに逃げられました」
「なに!? まだ落としておらんかったのか!? さっさと捕まえてこんか! ユーリエス嬢ほど皇太子妃にふさわしい令嬢などおらんぞ!!」
「ちょっとアル、どういうことなの?」
そんなのは言われなくても俺が一番わかっている。
もともとユーリは父上と母上の好感度が高かった。先日のへレーナの反逆を食い止めた功績も買われ、騎士たちからも人気を博している。
当然、一部始終を見ていた父上と母上も同様だ。あんなに機転が利いて、度胸も座り、どんな時も冷静なユーリをベタ褒めしている。リンフォード帝国の皇太子妃として、ユーリ以外に考えられないのは俺だけではない。
皇帝の執務室へ約束もなく訪れると、体調がよくなったのか母上も政務をこなしていた。ちょうどいいと思いつつ、文句を言いたそうな父上を無視して用件を告げる。
「父上、早急に俺とユーリの婚約を発表してください」
「おお! そうかそうか、それでは婚約宣誓書にサインを——」
「それはまだできません」
「なぜだ?」
俺の言っていることがチグハグで、父上が鋭い視線を向けてくる。ここは誤魔化しても仕方ないので正直に話すことにした。
「ユーリに逃げられました」
「なに!? まだ落としておらんかったのか!? さっさと捕まえてこんか! ユーリエス嬢ほど皇太子妃にふさわしい令嬢などおらんぞ!!」
「ちょっとアル、どういうことなの?」
そんなのは言われなくても俺が一番わかっている。
もともとユーリは父上と母上の好感度が高かった。先日のへレーナの反逆を食い止めた功績も買われ、騎士たちからも人気を博している。
当然、一部始終を見ていた父上と母上も同様だ。あんなに機転が利いて、度胸も座り、どんな時も冷静なユーリをベタ褒めしている。リンフォード帝国の皇太子妃として、ユーリ以外に考えられないのは俺だけではない。