悪役令嬢は全力でグータラしたいのに、隣国皇太子が溺愛してくる。なぜ。
「……ユーリ」

 そんなことを考えていたら、フレッドがベッドの上に膝をついた。そのまま私の両サイドに手をついて乗り上げてくる。私を見つめるサファイアブルーの瞳には、この時間に灯ってはいけない炎がチラチラと顔を出していた。

「フレッド? どうしたの、ベッドに上がってきて」
「ユーリ、愛してる」

 引きつった笑顔を返してみたものの、まったく効果はなくフレッドは蜂蜜みたいな甘さで愛を囁く。そして我慢できない様子で、私の唇を貪るように深い口づけを落とした。

「んっ……はっ、待って、フレッド……っ!」
「なあ、俺がどれだけ耐えてたか知ってるか?」
「な、なんの話……?」

 フレッドの獰猛な瞳が私を射貫く。なにを耐えたかなんて、察しはついているけれど思わず聞き返してしまう。もしかしたら違うかもしれないし。

「ユーリを想いながら、ずっとそばにいて欲情しないと思った?」
「そ、それは……!」

 私の予想は大当たりだった。わかってた。健全な男女がひとつ屋根の下にいて、私の貞操が守られていたのはフレッドの忍耐があったからだ。その点も前世で付き合っていた男たちと違う。
 私の気持ちを優先して、ずっと待っていてくれた。

「だから、もう少しユーリを堪能させて」
「でもっ……フレッ——」

 こんな時間からと言いたかったのに、フレッドに情熱的な口づけをされたらなにも考えられなくなってしまう。そのまま愛されて溺れて翻弄された。



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