悪役令嬢は全力でグータラしたいのに、隣国皇太子が溺愛してくる。なぜ。
 化粧水のことも伝えて、荷物もまとめてすぐに出発し翌日には皇城へと戻ってきた。
 ミカの様子が気になって、あまり遠くへ行かなかったのが幸いしたようだ。私が皇太子妃の部屋に戻るなり、ミカが突撃してきた。

「お姉ちゃ〜ん! やっと戻ってきてくれた!!」
「ミカ……ごめんね。私が臆病だったから……」
「いいの! お兄様が連れ戻すと思ってたから!」
「そ、そう……ははは」

 それでもやっぱり、こうしてミカの顔を見られるのは嬉しい。ミカには私がフレッドのもとを去ることと、近くで見守っていると手紙に残していた。

「ねえ、ねえ、婚約式の衣装は見た?」
「え、まだ見てないけど」
「えー、早く見て! こっちこっち!」

 ミカはまるでご褒美が待ちきれない子供みたいに私の手を引いて、部屋の奥に置かれている白い布をかけられた物体の前まで連れてきた。

「よーく見ててね! これぞ最高傑作!!」

 そう高らかに宣言しながら、ミカは白い布をバサッと取り払った。

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