悪役令嬢は全力でグータラしたいのに、隣国皇太子が溺愛してくる。なぜ。
番外編

29話 わたしの最推し(ミカエラ視点)

 わたし、ミカエラ・デル・リンフォードには推しがいる。
 ただの推しではない、後にも先にもこれほど心揺さぶられるキャラはいなかった。
 つまり——人生の中での最推しである。

 彼の名はヨシュア・ジーベル。お兄様の右腕となる存在で、侯爵家の嫡男なのだ。冷酷な印象を受けるお兄様とは反対に、ライトブラウンの髪に夕陽色の瞳はまるで太陽みたいで、お姿を拝見するだけで心がポカポカと温かくなった。

 当然、当て馬の補佐という立ち位置は『勇者の末裔』ではモブの中のモブだったので、コミカライズでちらっと出てきた際には拡大コピーして持ち歩いていた。

 わたしはクールなキャラよりも、お姉ちゃんみたいに春の陽だまりのようなヨシュアが大好きだ。そうだ、完璧にシスコンを拗らせているとはわかっている。
 お兄様だって妹として表も裏も調べ尽くし、大丈夫だと安心できたからお姉ちゃんを任せられると思ったくらいだ。

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