悪役令嬢は全力でグータラしたいのに、隣国皇太子が溺愛してくる。なぜ。
「ミカエラ様、少しお休みになられてはいかがですか?」
「ヨ、ヨシュア様……! いいえ、おかげさまですこぶる元気になりました。まだまだいけます」
「……顔色が悪いようです。これ以上の無理はお身体に毒ですよ」

 最推しの困ったような笑顔が尊すぎる……!!
 危うく鼻血を出しそうになって、なんとか踏みとどまった。ヨシュア様の目の前でそんな無様な様子を晒しては、末代までの恥だ。

「わ、わかりました……ヨシュア様がそうおっしゃるなら、少し休みます」
「はい、そうなさってください。ミカエラ様は私にとっても大切なお方なのです」
「……っ!!!!」

 わかってる!! 皇女として大切だと言っているのはわかってる!!
 でも今だけは脳内で妄想することをお許しください——!!!!

 そんな天国のような毎日も終わりを迎え、すべてが片付き皇城へと戻ってきた。


 これで、もうヨシュア様との接点はなくなった。
 お姉ちゃんもお兄様と婚約したし、ヨシュア様は補佐の仕事で忙しい。もともと接点が少なかったし、以前の生活のに戻るだけだ。

 そう思っていたのに、ヨシュア様は週に二、三度は私の部屋を訪ねてくれた。来るたびにお花やお菓子など差し入れも持ってきてくれる。

「あ、そうか。私がお母様の政務を手伝っているから、労ってくれてるんだ。やばー、変な勘違いするところだったわ」

 危なかった。最推しを前に正常な判断力を失っていた。こんなにマメに来てくれるのは……もしかして!? なんてご都合主義な展開を期待してしまった。

 勘違いで自爆するところだった……!! そんなことになったら悔やんでも悔やみきれない。



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