悪役令嬢は全力でグータラしたいのに、隣国皇太子が溺愛してくる。なぜ。
 そんなある日、ヨシュア様から夜会のパートナーになって欲しいと頼まれた。
 もちろん、食い気味というかヨシュア様の言葉に被せて「行きます!」と即答したのはいうまでもない。心底楽しそうに笑ってくれたヨシュア様の笑顔は、今も私の心のオアシスになっている。

 当日はヨシュア様の瞳と同じ色のドレスとイエローダイヤモンドのアクセサリーを贈られたので、嬉々として身につけた。いつも下ろしている髪もアップにして、宝石が際立つように注意を払った。

「ミカエラ様、迎えにまいりました。今夜は私に女神のような貴女様をエスコートさせていただけますか?」

 そんな風に余裕たっぷりで微笑まれて「……はい」と頷くだけで精一杯だった。
 だって、夜会のためにゴージャスな衣装を身にまとったヨシュア様が神々しくて、目に染みて、尊いなんて言葉では言い表せない。

 会場に向かう馬車の中でもうっとりとヨシュア様を眺めていたら、「そんなに見つめられたら照れますね」と恥ずかしそうに頬を染めたのだ。これはなんというご褒美だろうか。毎日必死に真面目に生きてきてよかったと、心から神に感謝した。

 ヨシュア様と夢のようなダンスを踊り、私の心臓の音が聞こえてしまうのではないかと緊張しまくりだった。

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