悪役令嬢は全力でグータラしたいのに、隣国皇太子が溺愛してくる。なぜ。
「ミカエラ殿下、実は以前から貴女様とじっくり話をしたかったのです。もしよろしければバルコニーへ行きませんか?」
「私のパートナーがすぐに戻ってまいりますので、申し訳ございませんが……」
「そうおっしゃらずに、両国の今後のこともございますから、ぜひお時間をください」

 やだなぁ、そんなことしたらヨシュア様といる時間が減っちゃうじゃん。しかもサラッと外交も絡んでるって匂わせて卑怯だよねぇ。
 うーん、ぶっちゃけマルクス王国と取引がなくなっても、そう痛手にはならないと思うけど……どうしよう。

「ミカエラ様。どうかなさいましたか?」

 しつこい相手に断れなくて困っていたら、ヨシュア様が颯爽と現れて庇うように間に入ってくれた。ホッと胸を撫で下ろす。

「レーヴェン王太子にバルコニーで話をしたいと誘われたのですが、ヨシュア様がすぐに戻られると思いましたのでお断りしようとしていたのです」
「ほう、未婚である皇女殿下とパートナーでもないレーヴェン王太子がふたりきりで話をしたいと?」

 ヨシュア様はそう言って、レーヴェン王太子に視線を向けた。わたしには背中を向けていて、どんな表情かわからないけど、レーヴェン王太子はビクリと震えて足早に去ってしまった。

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