悪役令嬢は全力でグータラしたいのに、隣国皇太子が溺愛してくる。なぜ。

30話 みんな誰かに愛される

 皇太子妃としての教育が始まり、私は毎日皇后様のもとで学んでいた。

 バスティア王国でも王太子妃の教育は受けていたので、足りない部分だけを補足している。結婚式は通常だと婚約期間を3年以上は経てからなのだが、脅威の一年後だと言われた。まあ、それまでにはなんとかなりそうだ。

 今日は週休二日のダラの日だ。

 フレッドも政務を調整して私の休日に合わせて、ゆっくりしてくれるようになった。朝早くから夜遅くまで政務をこなしているので、一緒に休めて実は嬉しいのだ。

 私はいつものように部屋着でベッドにぐでーっと横になり、フレッドの腕に頭を、クッションの上に足を乗せてリラックスしている。

「ユーリ、お腹空かないか?」
「んー、さっきナッツをつまんだから小腹すいたくらい」
「それならいいものがある」

 私の頭の下から腕を引き抜き、フレッドは私室へと姿を消した。ほんの一、二分ですぐに戻ってきたけれど、小さな紙袋を手にしている。

「帝都に来たばかりの頃に、ふたりでパン屋に行ったのを覚えてるか?」
「……あ、そういえば行ったかも」
「その店の前を昨日通りかかったから、懐かしくて買ったんだ」

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