悪役令嬢は全力でグータラしたいのに、隣国皇太子が溺愛してくる。なぜ。
 日々の暮らしは穏やかで、まったく不自由なく快適だ。フレッドは帝国出身なのもあって、買い物ひとつとっても的確なアドバイスをもらえる。

「ねえ、フレッド。ここのパン屋さんで明日の分も買って帰りましょう」
「ユーリ様、それならお勧めのパン屋があるので、そちらにしませんか?」
「そんなお店があるの? 行ってみたいわ」

 フレッドの提案で大通りから一本裏に入った狭い通りに、そのパン屋はあった。お店に近づくにつれてふんわりと香ばしい匂いが漂ってくる。もう匂いだけでおいしいのがわかった。

「いらっしゃいませ!」

 店員も愛想がよく、店内の内装もカントリー調で日本のおしゃれなパン屋さんのようだ。思わず前職の癖でここをこうしたら……などと考えてしまった。

「ユーリ様、ライ麦パンとフランスパンでよろしいですか?」
「ええ、それでいいわ……」

 と言いつつ、店内に並べられているチョココロネに目が釘付けだ。

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