悪役令嬢は全力でグータラしたいのに、隣国皇太子が溺愛してくる。なぜ。
 美華が就職して独立してからも、週に一度は顔を合わせていた。漫画や小説が大好きで、よくその作品について熱く語られたけど、美華の楽しそうな笑顔を見ているだけでよかった。

 美華が特にハマっていたのは『勇者の末裔』という小説で、漫画も大ヒットしていて、今度アニメ化すると嬉しそうに話していたのが懐かしい。

 その中でも一番人気のキャラが冷徹だけど一途な皇太子、アル様だと言っていた。『鍛え上げられた頑強な肉体、鋭利な刃のような眼差し、真っ直ぐに伸びた鼻梁、艶のある唇。一途な愛。お姉ちゃんの相手にピッタリ!』と何度も語られたのですっかり覚えてしまった。

 その頃の私は仕事が忙しくて、精神的にも肉体的にも限界に近かったのだと思う。
 私は店舗のリフォームを提案する営業だったけど、半年間通ってようやく受注してもらえたはずの店舗からクレームが入ったと上司の課長に呼び出された。

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