悪役令嬢は全力でグータラしたいのに、隣国皇太子が溺愛してくる。なぜ。
 うわあ、言い切った。イケメン騎士がやる気を違う方向に発揮してしまった。どうしよう、これは非常に断りにくい。私に忠義を尽くすために、業務外のこともこなすと言ってくれてるのに無下にできない。
 チラッとフレッドを見ると「まさか断らないですよね?」という無言の圧をひしひしと感じる。

「わ……わかったわ。よろしくお願い……ね」
「はい! お任せください!」

 満面の笑みを浮かべたフレッドは、キラキラと輝いて目に痛かった。
 それから念願のダラの時間を一カ月ほど過ごしていた。

 しかし、ここまでダラダラと過ごしていて、気が付いたことがある。
 ただダラけているだけではプロとは言えない。それはただ怠けているだけだ。ダラのプロとは微塵も生活の不安がないくらい働き、休みの日にはしっかりとダラける。

 そうしてベッドから一歩も動かず済むように、しっかりと準備を整え好きに過ごしてこそのプロだと気が付いた。さらにそのギャップこそが至上の喜びに繋がるのだ。なにごともメリハリが大切である。
 ——私はダラのプロへ一歩近づいた。



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