悪役令嬢は全力でグータラしたいのに、隣国皇太子が溺愛してくる。なぜ。
 それからも穏やかな日々は過ぎていく。
 私は事業をもっと軌道に乗せるために、新商品の開発を始めた。さまざまな材料を取り寄せ、前世で作っていた化粧水に近いものができるよう試行錯誤していった。

「ユーリ様、こんなところで眠っていてはお風邪を召されますよ」
「うう〜ん、でも眠くて……」
「それでは、俺が寝室までお運びいたします。失礼いたします」

 そう言って、子猫を抱き上げるように軽々とお姫様だっこされた。昨日は新商品の開発で朝方まで起きていたので、このまま眠ってしまいそうだ。ていうか、寝てしまえばいい。私を縛るものはなにもないのだから。
 フレッドがそっとベッドへ私を寝かせる気配を、沈みゆく意識の中で感じていた。

 目が覚めるとすでに日が暮れていた。もそもそとベッドから這い出して、一階のキッチンへ向かう。

「ユーリ様、起きましたか? 夕食の準備がちょうどできたところです。召し上がってください」
「え、本当!? すごいわね……私の起きる時間までわかるなんて」
「たまたまです。ほら、おかけください」
「ええ、ありがとう」

 こんな風にフレッドは護衛騎士以上の役割を笑顔でこなしてくれる。来月からさらにお給金をあげようと、心に決めた。
 それから二週間後には新商品の開発も終わり、いよいよダラの時間がやってきた。


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