悪役令嬢は全力でグータラしたいのに、隣国皇太子が溺愛してくる。なぜ。
 ——それから四カ月後。

「フレッド! ヨシュアさんを紹介してくれてありがとう! 化粧品工場も場所が確保できたし、帝国で暮らすための家も確保できたわ! これで夢に一歩近づけたわ!!」
「ユーリ様、おめでとうございます。お役に立ててなによりです」

 俺は帝国出身だと話したことを利用して、ユーリの独立を手助けした。なんのためにユーリがこんなに努力しているのかなんて、考えるまでもない。あのクズ王太子から逃げるためだ。
 それなら、俺が後押しして早めれば、早くチャンスがやってくる。

 ユーリと出会ってから十カ月。両親からもらった猶予はあと八カ月。のんびりなんてしてられない。最近では、目が合うたびに頬を染めて視線を逸らすユーリを、これでもかと抱きしめたいがなんとかこらえている。

 早く俺だけ見てくれないだろうか。
 そうしたら溶けるほど愛して、絶対に手放さないのに。

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