悪役令嬢は全力でグータラしたいのに、隣国皇太子が溺愛してくる。なぜ。
「おい白木(しらき)! お前は半年も担当してたのに、なにをやってたんだ! これじゃあ給料泥棒だろう!」
「はい……申し訳ありません」
「謝ったって時間は戻らねえんだよ! ったく、歳ばっかりくって使えねえババアだな!」

 とにかく激高している上司は、私を抉るような言葉を叩きつける。これでも仕事は真摯に向き合ってきたつもりだ。今までだって顧客満足は高い……と思っていた。

「も、申し訳ありません……私、謝罪に行って——」
「そんなもんはいらねえよ! 余計(こじ)れたらどうすんだ!? いいか、この案件は先方様のご指名で宮田(みやた)が担当するからな。わかったら、さっさと別の店へ営業かけてこい!」
「はい、申し訳ありませんでした」

 謝罪とともに深く頭を下げた。本当に返す言葉がない。
 宮田さんは私の後輩で、三年前に新卒で入社してきた。ふわふわの肩までのセミロング、大きな二重の瞳に長いまつ毛。その華奢な容姿は庇護欲をそそる。まだ若いからか甘えるような話し方で、男性社員のウケはよかった。

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