悪役令嬢は全力でグータラしたいのに、隣国皇太子が溺愛してくる。なぜ。
 父上からの呼び出しは確かにあったが、ただ時間ができたら執務室へ来いというものだったから無視していたのだ。

 フランセル公爵からの手紙も、おそらくユーリエスのことを大切にしてほしいとか、そういう内容は前にもらっていたから、きっとそうだと思って読んでいなかった。

 そんな……本当に私とユーリエスが婚約解消してしまったのか……!

 ぽっかりと胸に穴が空いたような、当たり前にあった存在がなくなって支えを失ったような。
 そんな喪失感が私の心を埋めていた。

 賑やかなデビュタントのざわめきも、夜会を盛り上げるダンスの演奏も、花のように舞う令嬢たちも、すべて遠くの出来事のようだった。


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