悪役令嬢は全力でグータラしたいのに、隣国皇太子が溺愛してくる。なぜ。
「それにしても、宮田ちゃん、よく白木のフォローしてくれたねえ〜! 本当に助かったよ!」
「そんな、たまですよぉ〜。でもせっかくご指名いただいたので頑張っちゃいます!」
「うんうん、なにかあったらすぐに俺に言ってよ。宮田ちゃんが困ってるのは放っておけないからさ〜」
「課長って本当に優しいですね! 頼りにしてます〜♡」

 宮田さんと課長の会話が、余計に私を惨めにさせた。でも今回のことは別だ。私がお客様にクレームをもらって、宮田さんがフォローしてくれたのだ。

「あの……宮田さん、フォローしてくれてありがとう。ちなみに……」
「なんだよ、白木! 俺と宮田ちゃんはまだ大事な話があるんだぞ」
「白木先輩、私がもっとお店をよくしますから、安心してくださいね〜!」
「ありがとう……よろし——」
「もういいだろ! ほら、さっさと営業に行けって!」

 課長が私の言葉を遮って被せるように言ってきたので、ちゃんと感謝も伝えられなかった。

 仕方ない、また改めてお礼を伝えよう。お客様の要望も随分とヒアリングしたから、明日には伝えて少しでも円滑に進むようにしないと……。

 そう考えながら、私は誰とも視線を合わせずに会社を出た。

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