悪役令嬢は全力でグータラしたいのに、隣国皇太子が溺愛してくる。なぜ。

9話 突然のプロポーズ

 クリストファー殿下を追い出したフレッドが戻ってきて、心配そうに私の顔を覗き込む。

「ユーリ様、大丈夫ですか?」
「ええ、婚約解消してから三カ月も経つというのに驚いたわね。まったくいい迷惑だわ」

 それに実はお父様も相当怒っていたようだ。宰相を務めるお父様がクリストファー殿下の処罰を求めたなら、きっと彼はもう終わりだろう。この先明るい未来が待っているとは思えない。まあ、今まで好き勝手やってきたツケが回ってきたのだから仕方ない。

 気を取り直してお茶をひと口飲んだら、フレッドが私の足元に(ひざまず)いた。なんだろうと思って視線を向けると、見たことがないくらい真剣な表情をしている。いつも自信にあふれたサファイアブルーの瞳が、不安そうに揺れている。

「では、俺が求婚しても迷惑でしょうか?」
「え……?」

 突然の展開に驚き、言葉が続かない。
 きゅうこん、とフレッドは言った。この話の流れからして、球根ではないだろう。
 では吸魂? 脈絡がなさすぎる、却下。
 窮困? 言葉の前後がつながらない、却下。
 となると……まさか、いやいやそんな。ありえないでしょう。

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