悪役令嬢は全力でグータラしたいのに、隣国皇太子が溺愛してくる。なぜ。
「え? どこへ?」

 私が尋ねてもフレッドは微笑みを浮かべているだけだ。そのままエスコートされて家の外へと連れ出される。というか流れるように優雅なフレッドのエスコートに驚いた。気品漂う立ち居振る舞いも、まるでどこかの王子様みたいだ。

「ねえ、フレッド、どこに行くの?」
「…………」

 ダメだ、笑顔なのになにも答えてくれない。私はどこへ連れていかれるのだろう。フレッドのことだから、きっとおかしなところではないと思うけど。……え、大丈夫よね? どこかに連れ込んで監禁とか、しないわよね?
 いやいやいやいや、フレッドはそんなヤンデレキャラじゃないよね!?!?

 玄関を出ると家の前にはやたら立派な馬車が止まっていた。

「え、この馬車止まるところを間違えたのかしら? フレッド、避けてもらうように言ってくれる?」
「…………」

 微笑みを浮かべたフレッドは馬車の扉をガチャッと開いて、私に無言の圧力をかけてくる。どうやら馬車が止まる場所は家の前で間違いなかったらしい。まさに王子様のようにキラキラしているのに、ひしひしと伝わるプレッシャーに負けて馬車に乗り込んだ。

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