悪役令嬢は全力でグータラしたいのに、隣国皇太子が溺愛してくる。なぜ。
     * * *



「それなら皇城に呼びつけて紹介したり、皇帝陛下から命令させればよかったじゃない」
「それじゃダメなの! ただの政略結婚になっちゃうかもしれないし、お姉ちゃんがちゃんと愛されないと幸せじゃないでしょ!」

 そうなのか、美華はそこまで私のことを考えてくれていたのか。ジーンと心が熱くなって、すっかり枯れたと思っていた涙が目頭に込み上げる。

「それでね、お姉ちゃんを結婚相手に決めたらここへ連れてきてって頼んでおいたの! 絶対にふたりはベストカップルだと思ったのよ!!」
「ははは……そういうこと」
「ああ、今まで騙していたようですまない。俺はこのリンフォード帝国の皇太子アルフレッドだ。改めて俺の妻になってほしい」

 アルフレッド。なるほど、確かにアル様でフレッドだ。そもそも美華からはアル様としか聞いてないから、まったく気が付かなかった。

「え、それならお断りします」
「えええ! なんで断るの!? お姉ちゃんには絶対アル様がお似合いだから!!」
「俺はユーリを妻にすると決めたんだ。なにがダメなのか言ってくれ!」
「いやー……だって、ねえ?」

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