悪役令嬢は全力でグータラしたいのに、隣国皇太子が溺愛してくる。なぜ。
 この頃には両親からいつ相手を連れてくるのかと、矢のような催促が届いていた。
 両親との約束の期限はすでに半年を切っている。まさかなにも進展がないとは言えず、こちらの準備が整っていないと濁していた。

 そんなある日、買い物に出た先でお忍びのミカエラに会った。たまに俺ひとりで出かけた際にこうして会って、ユーリの様子を確認しにくるのだ。
 個室のあるカフェに入って、二週間ぶりの会話を交わす。

「元気そうだな」
「ええ、お兄様は……まあ、変わらないわね。お姉ちゃんはどう?」
「今はダラの時間だ。今日は昼まで起きてこないと思う」
「ダラ……ぷくくくっ! さすがお姉ちゃんだわ! ああ見えて仕事はバリバリこなすのに、本当は面倒くさがりなのよねえ……ふふふ」

 初めてミカエラから話を聞いた時には、気でも触れたのかと思った。それでもミカエラが知らないような王家の秘密や、国家の敵となりうる邪教崇拝している団体の拠点を言い当てたりしたので信じるしかなかった。

 ユーリの話をする時だけは年相応の笑顔を見せる。俺にとってもミカエラにとっても、ユーリは特別な存在で間違いなかった。

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