悪役令嬢は全力でグータラしたいのに、隣国皇太子が溺愛してくる。なぜ。
 それから洗濯に取り掛かったのだが。
 ユーリの部屋着からはらりと小さな布が落ちた。拾い上げると、それはこともあろうかユーリの下着だった。おそらく五分くらいは固まっていたと思う。

 こ、これは……ちょっと待て。今まではこんなことがなかったが、もしかしたらダラの時間に入ったから俺に洗えということなのか!? しかしこの繊細なデザインは……いやいやいやいやいや!! 見てはダメだ、ユーリに失礼すぎるだろう!! だが、しっかり汚れを落とすためには見なければ……!!

 ちんまりしたレースの塊を握りしめて、十分は葛藤した。そろそろ洗濯を始めないと、日中で乾かなくなってしまう。俺は覚悟を決めて、無我の境地で挑んだ。

 その夜、ミカエラのアドバイス通りカレーを作ったら、ユーリは大喜びしてくれた。
 さて、今日の本番はこれからだ。たっぷりと瞑想をして邪念は振り払った。あくまでもただの護衛として、用件を伝えるだけだ。

「あの……それと、こちらも一緒に出されていたので、一応洗っておきました……」
「ど、ど、どうしてこれが!?」

 ユーリは狼狽まくって、そそくさと部屋に戻ってしまった。
 しまった、そっと部屋着と一緒に渡すのが正解だったのか……!
 どうやら俺はやり方を間違えたようで、三日間もユーリと視線が合わなかった。



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