悪役令嬢は全力でグータラしたいのに、隣国皇太子が溺愛してくる。なぜ。
 心配ないという風に微笑んで、ミカエラ殿下は話を続ける。

「それにイリスの動きもなかったから、物語は始まっていいないと思っていたの」
「ああ、俺もバスティア王国でそれとなく情報は集めていたが、クリストファーと出会ったという事実はなかったな」

 なんとイリスの動きも把握していたようだ。我が妹、いや、さすが皇女というべきだろうか。それにフレッドが私以上に勇者の末裔を知っていて、肩身が狭い。

「それなら俺は父上に話を聞いてこよう。なにか詳しいことがわかるかもしれない」
「お兄様、お願いします」
「ユーリ、少し待っていてくれ」

 フレッドはそう言って私の手を取り、指先にキスを落として甘い笑みを浮かべて颯爽と部屋から出ていった。

「なに今の! めちゃくちゃ皇子様だったんだけど!?」
「うん、本場の皇子様だから」

 思わず絶叫した私に、ミカエラ殿下が冷静なツッコミを返す。それもそうだと気付いて、少し落ち着きを取り戻した。私の中ではフレッドは騎士のままだから、これから先ついていけるのか少々不安だ。

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