悪役令嬢は全力でグータラしたいのに、隣国皇太子が溺愛してくる。なぜ。
「失礼しました、ミカエラ殿下にお聞きしたいことがあります」
「お姉ちゃん……落ち着かないから、昔みたいに美華って呼んで、普通に話してよ」

 ミカエラ殿下が悲しそうに眉尻を下げる。私は妹のこの表情に弱い。ただでさえ我慢させているという負目と、滅多にわがままを言わない妹のお願いというダブルパンチで、拒否などできるわけがない。

「わかったわ。それならミカと呼ばせてもらうわね。でも公の場では無理よ。ミカは皇女様で私は隣国の公爵令嬢でしかないのだから」
「うん、わかった! それでいいよ、嬉しいなあ……またお姉ちゃんとこうやって話ができて」
「うん、そうだね……」

 私が逃げ出そうとしたことなど露知らず、ニコニコと満面の笑みを浮かべるミカに胸がギリギリと痛んだ。今ならフレッドに捕まってよかったとすら思う。

 陰からこっそり見守ろうと思っていたけど、それだけではダメなのかもしれない。他の手段で皇太子妃なんぞにならない方法を探してみようか。

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