悪役令嬢は全力でグータラしたいのに、隣国皇太子が溺愛してくる。なぜ。
 晩餐の準備のために侍女を呼んでもらった。脱走した時についてきてくれた侍女は青い顔で現れ、私の顔を見た瞬間、心配したと泣かれてしまった。もう二度としないと本気で約束したので、次はなるべく他の人を巻き込まないようにしなければ。少なくともこの侍女がいない時にしよう。

 それから準備が整って、フレッドが私を迎えにやってきた。

「ユーリ、準備は……」

 部屋にやってきたフレッドが足を止めて、口を半開きにしたまま固まっている。なにかおかしなところがあったかと見直したけど、問題なさそうだ。

「フレッド、どうしたの?」
「あっ……いや。その、とても綺麗で……見惚れてた」

 頬と耳を真っ赤に染めたフレッドは、やや視線を外しながらポソポソと話た。
 そういえば、フレッドのために着飾ったのはこれが初めてだ。光を反射してキラキラと輝くサファイアブルーのドレスにシルバーのアクセサリーと付けて、全身フレッドの色に染まっている。

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