悪役令嬢は全力でグータラしたいのに、隣国皇太子が溺愛してくる。なぜ。
 フレッドも漆黒のジャガード織りのジャケットで、ポケットチーフは薄紫色だ。普段は下ろしている前髪も後ろにざっくりと流して、眩しいほど整った顔立ちがあらわになっている。はにかむフレッドを見ていたら、私までドキドキと心臓がうるさくなった。

「フレッド、そろそろ行かないと遅れるわ」
「あ、ああ。そうだな。では行こうか」

 そっと腕に手を添えたら、いつもよりフレッドの体温が高い気がした。
 その後晩餐では、宣言通りミカとフレッドが援護射撃を撃ちまくってくれた。

「まあまあ、ユーリさんはとても聡明なのね」
「そうです、母上。その上商売の才能もあるようで、ユーリの化粧品は飛ぶように売れています。これなら皇太子妃として帝国の運営を安心して任せられるでしょう」
「ほう、商売上手なのか。それなら審美眼もあり交渉も上手いのだろう。結婚後は外交をメインに頼めそうだな」
「いえ、さすがにそこまでは……」

 なぜかすでに結婚前提で話が進み、さらに外交まで担当させられそうになっている。勝手に妄想を膨らませるのはやめてもらいたい。

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