気になる彼はドクターヘリに乗る救急医


 大きな総合病院の中にある、救命救急医局へ向かう。

 そこの、HCUという様態が急変するかもしれない患者用の病室を目指す。


 目的の病室をみつけて、私は恐る恐る中を覗き見る。

 色々な病状や怪我をした人たちが、ベッドで横になって安静にしていた。


「個室じゃないのね……」


 社長も、病状が異なる患者さんたちに紛れ、ベッドで横になっている。

 静かに歩み寄っていくと、社長が私に気づいてくれた。


「高梨くん、来てくれたのかい……」


「はい、心配だったものですから」


 心配だったのは真実だけど、再度取引のお願いを常務から言われたなんて話せる雰囲気じゃない。

 体の調子が良くなって、退院してからでもいいんじゃないかと思えてきた。


「頭に包帯を巻いてますけど、だいじょうぶですか?」


「倒れた時に、頭をぶつけたから……」


 社長の言葉を断ち切るように、話しかけてくる人が来た。


 私はその声に、聞き覚えがある……



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