気になる彼はドクターヘリに乗る救急医


『車両火災の疑いがあるため、バッテリーを外しました。放水の準備は整いましたが、現在、運転手が車内に閉じ込められてレスキューの到着を待ってます』


 消防隊員が持つ無線機から、状況確認の声が聞こえてくる。


「そっか、私、車から出れないんだ……」


 右足は動くけど、左足が挟まれて抜けない。

 右腕もいうことをきかないし、頭も痛い。

 お腹も……なんか気持ち悪いな。


『消防本部より連絡、出動要請していたドクターヘリが、間もなく到着します』


 えっ、ドクターヘリ?

 消防隊員が持つ無線機から、たしかにそう聞こえた。


「ランデブーポイントは交差点の中心、すぐに離れろーっ!」


 交差点の中心に、ポッカリと大きな空間ができる。消防車や警察車両も邪魔にならない所へ移動している。


 その時、バラバラと空気を切り裂くローターの音と、カン高いエンジンの音が聞こえてきた。

 だんだんと迫ってくる音を聞いて、消防隊員の人たちがホイッスルを拭いて注意をうながしてる。



 ―― その時!



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