気になる彼はドクターヘリに乗る救急医
消防隊員の人が近づいてきて、先生たちに状況説明を始める。
「アクセルとブレーキの踏み間違い事故です。すでに相手のかたは救急車で搬送されました」
さらに状況説明は続く。
「こちらの患者は、右運転席側面と車両前部が大破。運転席側のドアは救急隊員で取り払いました。ですが、左の足が車体に圧迫されて動かせません」
「そうか……」
氏家先生も、状況確認を耳にしながら手を動かしてる。
「車両を運転していた傷病者の年齢は27歳、性別は女性、名前は高梨 真理です、以上!」
救急隊員はそう告げると、自分の持ち場に戻っていく。
「お前の名前、高梨 真理っていうのか」
「先生、そうです……」
「……ひさしぶりだな」
「えっ……」
氏家先生の言葉に、私は驚いてしまう。
「アンタの名前、高梨なの?」
「そうだよ……」
「ごめん、いま知った。これからはアンタって言わない」
「うん……」
白井さんも、視線を合わせないまま、そう言ってくれた……