気になる彼はドクターヘリに乗る救急医
私を乗せたドクターヘリが、フワリと浮き上がる。
そのまま真っ直ぐ上昇して方向転換、救急救命病棟へ向かって速度を上げて飛んでいく。
「氏家先生って……」
私が小声で話してる様子に気づいた氏家先生。
ヘッドセットを外して、私の口元に耳を近づける。
「氏家先生って……佐藤 洋介くんなの……」
こんな時に不謹慎だと思ったけど、薄れていく意識の中でつぶやいた。
先生は何も言わないまま、ヘッドセットをして耳をふさぐ。
そして、胸ポケットから四つ折りの紙を取り出し、私の左手の上に乗せた。
右手は骨折して自由がきかない。
でも、左手は痛みをこらえて動かせる。
擦れてボロボロになった紙を、私は片手でゆっくり開いた。
ノートを破って書いた文面に、見覚えがある。
それは、小学三年生の私が書いたものだった……
「みつけた、私の片思いの人……」
―― そう思った瞬間