気になる彼はドクターヘリに乗る救急医
「先生、高梨さんが吐血しました!」
「見れば分かる!」
「心拍数、下がってます!」
「分かってるって!」
氏家先生が私の左手に持っていた手紙を素早く折りたたみ、自分の胸ポケットにしまい込む。
そして、ヘッドセットのマイクに向かって話し始めた。
「オペ室を開けとけっ!着いたらすぐに緊急手術だ!」
そう言うと、先生は白井さんに視線を向けながらマイクをつかって話す。
「肋骨骨折で肺挫傷だ、分かってるな」
「さっきエコーで見たので……そうですね……」
白井さんが私を見つめながら、ゆっくり頷いてる。
言葉になってないけど「だいじょうぶだよ」って言ってくれてる気がした。
「おい、市川! 到着までどれくらいかかるっ!」
「向かい風に押し返されてる!もう少し時間をくれ!」
「天気は大丈夫なんだろうなっ!」
「なんとか持ちそうだ!最大限のことはやらせてくれ!」
「了解!頼んだぞっ!」
ガタガタと小刻みに揺れるドクターヘリの中で、緊迫した状況が続く……