気になる彼はドクターヘリに乗る救急医
ごめんなさい、氏家先生。
ここにいる看護師さんから、こっそり聞いちゃった。
先生が大学に入学する前、お母様が再婚したんですってね。
佐藤から氏家に名字が変わることを、先生は受け入れたんだ。
面影はあったけど、ステキな男性になってたから佐藤くんだって気づかなかったよ。
あの時、手渡した手紙も大事に持ってたなんて、思ってもいなかった。
「じゃあ白井、あとはたのむ」
「はい」
私のベッドから離れて行くとき、先生が自分の胸ポケットから手紙を出して私の右手に載せる。
そのまま恥ずかしそうに背中を向け、病室を後にした。
「それ、氏家先生のお守りなんでしょ? 早く右腕が治るようにって、願いを込めてるんじゃないのかしら?」
「先生……」
四つ折りになったままの手紙。
見た目は黄ばんでボロボロだけど、書いてある内容は分かってる。
佐藤 洋介くんを好きな気持ちと、怪我をしたときに、ずっと側にいてくれた感謝の思いが綴ってあった……