図書委員のさいとうさん。
まさかの展開だった。
こんなに優しい、ちょっと意地っ張りなおばあさんが!?
てっきりほかの魔女かと思ってた……。



(仕方ないさね、役割が決まってるんだ。私がやらないと他の魔女が困っちまう。)



まさか?
金の皿が足りないことを知っていた?
本当は他の魔女が招待されないはずだった?
情報は小鳥たちからいくらでも仕入れられる。でも私が気づかないようになんて……どうやって?



(おまえさんが気付こうが気付くまいが、運命は変わらないんだよ。本に書かれているんだから……。そしてそれを我々……魔女は知ってるんだ。)



なんで教えてくれなかったの!?
おばあさんはそんな悪い魔女じゃないのに!!



(ほら、そうやって泣くだろう?そんな悲しい顔をさせたくなかったんだよ。ここから先は私が引き受けるから……あんたはしばらく寝てな。)



そう言われたあと、私の意識は遠のいた。








15年後。
私は目覚めた。
いばら姫への呪いの発動とともに。



(ようやくお目覚めかい?)



茨が城を囲っていく。
その様子を遠くから見ていた。
憎まれ役を買って出て、やりたくない仕事をする。
私の心を守るために、全てが終わるまで15年もの間私を眠らせた。
すると、私の身体がキラキラと光り始めた。



(お迎えが来たようだよ。さあ、元の世界へお戻り。)



私が戻ったら、おばあさんはどうするの?
誰か話し相手はいるの?



(今までだってひとりだったんだ、これからもひとりだよ。これから100年、あの城を見守らなければならん。)



100年……………。
ひとりでいるにはとても長い。



私は決めた。100年間ここに残ると。
おばあさんをひとりにはできない。
私を助けてくれたおばあさんを今度は私が助ける番だ。



さいとうさん!聞こえるなら私のお願いを聞いて!私はあと100年おばあさんといっしょにいたい!
おばあさんを助けたい!



(おまえさん、なんてことを!元の世界に戻ってしまえば、ただの本なんだよ!?大丈夫さ、我々なら!さぁ、お戻り!)



嫌です。
ほら、さいとうさんも願いを聞き入れてくれた。身体中のキラキラした光が消えていった。



(馬鹿な子だね、ほんとに……。)



そう言いながらおばあさんは、とても嬉しそうに明日から新しい薬でも作るかと話し始めた。
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