図書委員のさいとうさん。
「さてと。」 



家についたりなは、早速『灰かぶり』を読んでみることにした。



(確か、シンデレラは継母と姉たちにいじめられていたんだよね。それを見かねた魔女がかぼちゃを馬車にしてくれたり、ネズミを馬にしてた。そして0時までに帰らないと魔法が解けてしまう、と。)



そして、ガラスの靴を落としてしまって王子様がサイズの合う女性を探し出した。
王道のシンデレラのお話。こちらのほうが一般的だろう。
そう思いながら原作を読んでみた。




…………………。




……………………………。




……………………………………………!!!




グリム童話、怖いかも……。
全然ではないけど、話が違いすぎて怖い。
特に怖いのが足の指を切ってまで靴を履こうとする姉たち。それを止めもせず勧めている継母!
しかも子供の頃読んだものより遥かに長くて面白い!



「さすがさいとうさんがオススメする本だけあるな!」
 


その日は寝る直前まで灰かぶりを何度も何度も読み返した。そして、いつの間にかそのまま眠ってしまった。






チュン、チュン……。
朝だ。窓際に小鳥が集まっている。
起きなきゃ……。



(ヤバい!宿題もやってないし時間割もあわせてない!!)



バッと飛び起きた……ら!?
私の部屋じゃない、どころか日本の家の造りではない。
木造だけど梁はそのままだし、壁紙などもない。そしてやたら冷える。



(どこなのよ……ここは……!!?)



「起きたのかい?リナ。さあ、さっさと着替えて父さん母さんを手伝っておくれ。」



見たこともない女性と男性。
皆で一緒にベッドで寝ていたらしい。
ベッドと言っても、木の板に藁を敷き詰めて布を被せたものだ。



「おはよう、母さん。今手伝うわ。」



勝手に言葉が出てくる。
決められた会話のようだ。
何をするのかもわからないのに、身体が勝手に動いている。



質素な朝食を食べ、皆で家業のパン作りをする。パンなど作ったこともないのにどんどん勝手に手が動く。



(何これ!!?)



きれいな焼き目のついた、素朴なパンを店頭に並べる。
そしてお客さんがやってきたら、売る。
見たこともないお金。
見たこともない人々。
外を見ると、田舎の外国のような町並み。



不思議。
絵本の中にいるみたい……。





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