図書委員のさいとうさん。
パン屋さん生活も1週間が過ぎる頃……。



お城でパーティが開かれることになったと聞いた。貴族たちがドレスや宝石を注文したり、うちもお城のパーティに出すパンの大量注文が入った。



「さぁ、街中が大賑わいだ!うちもパーティの日は大忙しだぞ!」



父さんが張り切っている。
そうだよね、銀貨の枚数が桁違いな注文だもの。1年分以上の儲けを1日で支払ってくれるなんて。
これで色々買えるぞ!とみんな大喜び。
色々なものを直しながら使っていたのよね……。



頑張っていこー!と家族で励まし合っていたとき、アシェンプテル……もといシンデレラが買い物にやってきた。



「いらっしゃい、アシェンプテル。あんたも聞いたかい?お城でパーティが開かれるんだよ。」



「こんにちは、ノラおばさん。えぇ、聞いたわ。お父様に連れて行ってもらえないか聞いてみるつもり……。一度だけでいいから、パーティに出てみたいの……。」



叶わないかもしれないけれど、行ってみたい。本来ならシンデレラはパーティなんて当然出席するべき人物なのに、なんでこんな事になっているのか。



何か手伝ってあげたい。
けれどこの1週間、決められたこと以外は話せないし動けない。
見ていることしかできないのだ。
私が動くと、本の世界……物語自体が変わってしまうからなのか?



(ごめんね、こんな心の優しい素敵な女の子なのに私は何もしてあげられない……。)



今日も私は新作のパンを無理やり作って、シンデレラに持たせた。
それくらいしか出来ない私を許して。



「いつも新作のパンをありがとう、リナ。」



そう言って笑ってくれるシンデレラに、頑張って!と心から応援した。
パーティ……行けるっていうのはわかってるけど、ドキドキしちゃうよね。




 

数日後…………………。
無事に数百羽の小鳥たちが旦那様の屋敷に入っていったと街中の噂になったとき、もう大丈夫だと私は心からほっとした。











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