推しがいるのはナイショです!
「なんだよ、知りあい?」
「違いますけど……嫌がっているんですからやめてください」
 その男たちはこちらに向くと、私のことを上から下まで無遠慮に見回した。

「なんだよ、あんたもまざりたいのか?」
「そんなんじゃ……」
 と、そのすきをみてその女子高生はいきなり走り出した。

「あっ」
 すれ違いざま女子高生がぶつかって、私は自分のバッグを落としてしまった。手帳や財布がばらばらと飛び出て、その子は戸惑ったように足を止めた。けれど、男たちが近寄ってくるのを見て、一瞬私の顔をみるとそのまま走って逃げてしまった。

 え、ちょっと? と思わなかったこともないけど、ありがとうごめんなさい、という小さなかすれた声が聞こえて、正直、ほ、とした。
 怖かったもんね。仕方ないよ。

 男たちは女子高生を追うこともなく、新しく見つけた私に矛先を変えた。
「あーあ。せっかく一緒に遊ぼうと思ったのに。まあいいや、代わりにあんたが相手してくれるんだろ?」
「あんたそんな恰好してるけど、よく見りゃかわいいじゃん。スタイルいいねえ。その眼鏡、伊達?」
 私は、散らばった荷物をふるえる手で拾うと、男たちに背を向けた。
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