ミミちゃん

「…………うぅ………ヒッ…………あぁ…………」

暗闇の中、何者かの啜り泣く声が響いている。誰が泣いているのか、どこからその声は聞こえてくるのか、それはわからない。何故ならこれは現実ではなく、甘粕英美里（あまかすえみり）が見ている夢だからだ。

（ああ、またこの夢……）

四月、英美里が中学生になった頃からこの奇妙な夢を毎日のように見るようになった。暗闇の中、誰かがずっと泣いている夢であり、その泣き声に聞き覚えなどはない。

（一体いつになれば、こんな気持ち悪い夢を見なくなるのよ！！）

啜り泣く声を聞いていると、英美里の中に苛立ちが募っていく。眠るまで、英美里は幸せな気持ちでいたのだ。

英美里の両親は会社を経営しており、生まれた時からから何不自由ない生活を英美里はしていた。お城のような大きく広い豪邸に住み、庭には巨大な噴水はもちろんあり、テニスコートやプールもあり、遊びに来た同級生たちはみんな驚き、「英美里ちゃんの家、すごいね！」と口々に言う。それが、英美里にとって誇りだった。