ミミちゃん
「な、何よ……。私は悪くないから!」

英美里はそう言って、その場から逃げ出した。だが心臓はバクバクとうるさい。グルグルと頭の中では嫌な未来が浮かんでいた。そして、それは的中してしまう。

頭の打ちどころが悪かった塔子は、そのまま帰らぬ人となった。



塔子が亡くなった後、英美里の両親は学校に大量の寄付をし、真実を隠蔽した。取り巻きたちにも口止め料を支払い、英美里は小学校を転校し、あの事件からしばらく経つと、英美里はすっかり塔子のことなど忘れてしまっていた。それが、今になって鮮明に思い出されている。

「本当、何なのよあの夢……」

英美里がそう言い、自分で自分の体を抱き締めて腕をさすっていたその時である。ボトボトと何かが落ちてきた。落ちてきたものを見て、英美里は悲鳴を上げる。

落ちてきたのは、あの日、英美里が取り巻きたちとバラバラにしたミミちゃんだった。綿がベッドに散らばり、赤いボタンでできた目が英美里を捉える。

「ひっ……」

英美里が後退り、部屋から逃げ出そうとした時だった。突然、部屋の中に声が響く。

「ミミちゃんはどこ?どこなの?どこにあるの?ミミちゃんは?ミミちゃん。ミミちゃん。ミミちゃん。ミミちゃん。ミミちゃん。ミミちゃん。ミミちゃん。ミミちゃん。ミミちゃん。ミミちゃん。ミミちゃん。ミミちゃん。ミミちゃん。ミミちゃん」
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