ミミちゃん
英美里は、何の感触もしない暗い地面を思い切り足で蹴る。夢のため、痛みも何の感触もない。だが、この泣き声と自分のはっきりした意識だけがどこか不気味だ。

英美里が怒鳴りながら果てしなく広がる暗闇を睨み付けると、先程までうるさいくらいだった泣き声がピタリと止む。そしてどこからか、ズルズルと何かを引きずるような音が聞こえてきた。それは、ゆっくりと英美里に近付いてきている。

「な、何なの!?」

急に恐怖が込み上げ、英美里はどこに逃げたらいいのかわからずとも走り出す。何も見えない暗闇の中を、ただ走った。その間にもズルズルという音はゆっくりと、だが確実に英美里に近付いてきている。

「きゃあッ!!」

何かに躓いたのか、英美里の体が強く地面に叩き付けられる。英美里の脳が転んだと処理するより前に、ズルズルと動く何かが近付く方が早かった。

グッと何かが英美里の足を掴む。それは、氷のように冷たい手だった。英美里の口から声にならない悲鳴が漏れ、恐怖がさらに大きくなっていく。
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