ミミちゃん
「私は皆さんが想像している通り、貧乏な家の子どもです。家は築数十年のボロアパートだし、お母さんは仕事を掛け持ちしているし、みんなみたいに旅行に行ったり、好きなキャラクターのおもちゃを買ってもらうこともありませんでした。でも、そんな私にも大切なものがあります。それが、このぬいぐるみです」

塔子が引き出しから出したのは、ボロボロのうさぎのぬいぐるみだった。赤いボタン二つがうさぎの目になっており、鼻は黒いボタンでできている。手作りだと誰もが見てわかるものだ。だが、それを塔子は幸せそうに見つめている。

「このぬいぐるみは、母が私のために一生懸命作ってくれたものです。名前は「ミミ」と言います。みんなが持っているぬいぐるみよりもボロボロかもしれないけど、私はお母さんが寝るのを惜しんで作ってくれたこのぬいぐるみが大好きで、宝物です」

塔子の作文が終わると、担任が作文を褒めていた。それに照れている塔子を見て、英美里は思い付いてしまう。あのぬいぐるみをいじめに使おうと。
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