転生した双子アイドルは伯爵令嬢に恋をする ~一途な恋の音色~
クスフォード侯爵家の執事マシューはコツリと足を止めた。
年齢は44歳、我が家は代々この家に執事として仕えている。

ここ数日ルイ様とルカ様が私の仕事をよく観察しているようだ。
気づいていない振りをしながら仕事をしている。

そういえばと懐かしい記憶を思い出す。
あれはおふたりがまだ小さな頃……確か5歳前後。


「おかえりなさいませ!」

「ちがうよ、ルカ!おかえりなさいませ、だんなさま!だよ」

「あー!そうだったー!アハハ!」

「やっぱり僕のほうが上手だよね!」

ラーク様をお迎えしていたところに、おふたりが走ってきて、ラーク様を旦那様と呼んだ。

私とラーク様は顔を見合わせた。

「マシューの真似をしているのかな?」

「……そのようですね」

遊びに見えるようで、ルイ様の所作は綺麗すぎた。
まるで本物の執事のように。

後日何をしていたのか訪ねてみると、おふたり共に覚えていなかった。

「え?そんなことした?」

そして、ピアノも。

音楽室の近くを通っていた時、ピアノの低音が鳴り響き、中を覗くとルイ様とルカ様がピアノを弾いていた。
最初はピアノで遊んでいるのかと思ったが、信じられない光景がそこにはあった。
とても4、5歳の子供が弾くような曲でも技術でもない。
私は自分の目を疑った。
しばらく目が離せずに魅入っていたが、同じく驚愕しながらおふたりを見ている人が隣に立っていた。
ピアニストのミッシェル・カランカ様だ。

おふたりの顔つき、聞いたこともない曲、素早い指の流れ。
何かに取り憑かれているのではないかと本気で思ったほどだ。

だが、やはりこれも覚えてはいなかった。


あの頃はよく眠っていたこともあり、覚えてはいなかったのだろう。
しかし、今度は何をしているのか。
ルイ様はさりげなくだが、ルカ様は分かりやすすぎる。

「ルカ様、何か?」

私はクルリと振り向き、訪ねてみる。

「えっ!?な、何でもないよ!」

驚いた顔をしてご自分のお部屋の方に行ってしまった。

「フフフッ」

本当に可愛いらしく、未知なる音楽の才能にも溢れ、周りの人々を惹きつける不思議な魅力のあるおふたりだ。

「さて、私の息子達はあのおふたりにお仕えすることができるかな……」

今はまだ執事として勉強中の我が息子達と、この先のクスフォード侯爵家の未来を想って、当主ラークの元へと歩き出した。


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