転生した双子アイドルは伯爵令嬢に恋をする ~一途な恋の音色~
「またこんなところで何やってんの?」

庭園のガゼボに座っているノア様。
周りにはたくさんの薔薇が咲いていて、薔薇のアーチも近くにある素敵な庭園ね。

「……別に。花を見てただけだよ」

天使のノア様と薔薇。
なんて絵になるのかしら。

「綺麗に咲いているわね。あの薔薇は見たことがない色だわ」

「……何さりげなく隣に座ってるわけ?カルセオラ様は」

「お花を見たいんだからいいじゃない。日陰で涼しいわね、ここ」

爽やかな風にサワサワと花や草木が揺れる。

「綺麗なお花を見てるわりには浮かない顔ね。まだ元気出ないの?分かりきってたことじゃない」

「……」

「初恋は実らないって言葉があるのよ」

「……」

「実ってる人もいるけどね」

「…どっちなんだか」

また風が吹き薔薇も揺れる。

「……ここでよく一緒に花を見て話をしていたんだ」

「メリアーナ様と?」

「ああ。まぁ、レイお兄様の話が多かったけどね」

「メリアーナ様らしいわね」

「フフッ。だよね」

「あなた、モテるんだから大丈夫よ!」

「……」

「いい加減泣きやんだら?天使の笑顔のノア様でしょ?」

「今日は泣いてないよ!前は変なところ見られたけど!もう弱味に付け込むようなことはするなよ!」

ノア様は頬をほんのりと赤くさせて怒っている。

「はいはい。ごめんね。あの時は協力してくれてありがとう」

……濃い紫色の瞳から流れていた涙は綺麗だったけどね。
いつもの塩対応より、皆に対する天使の笑顔のノア様の時より、大人びて見えたわ。

「しょうがないわねぇ。真璃愛様がまた歌ってあげるわよ」

だから元気出しなさいよね。

『ラーラ、ラ……』

サァッと風が舞い上がる。
私の歌と一緒に。

長く実らない想いを募らせてしまったこの人。
素敵な恋の想い出だけは残し、悲しい今の気持ちだけこの夏の空に舞い上がり、少しでも楽になるといい。


「あー、あー、あ、うー!」

「あれ?アイ様ごきげんだね」

「本当だ。まるで歌ってるみたいだね、ルイ」

窓から入る爽やかな風と共に、綺麗な歌声が聴こえた気がした。


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