転生した双子アイドルは伯爵令嬢に恋をする ~一途な恋の音色~
これでは……帰れない。
僕達はまたステージの中央へと戻り、マイクを構えた。

「皆様、ありがとうございます」

「ではもう少しだけ僕達の歌とダンスを」

ピアノが流れてクスリと微笑む。
選曲もどう考えたのか…。
きっと元子猫ちゃん達の入れ知恵もあるな。

またリズミカルに動き、伸びやかに歌う。
やっぱり僕達は歌とダンスが大好きだ!

客席を見るとクレアとシェイラも笑顔だ!
元子猫ちゃん達やクラスの皆も楽しそう!
応援うちわの種類もいっぱいある!
皆、たくさん作ってくれたんだね。

僕も笑顔で両手を頭の横で少しだけ曲げて、ウサギの真似をして、なぜか多い『ウサ耳して』のうちわを持っている人達に応える。

『キャアアア!』
『か、可愛い!!』

フフッ!楽しい!

舞台袖にいるジェイク様と目が合った。
あと5分と指を広げて合図してくれている。
そろそろ終わりのようだ。
琉生とまたステージの中央へと戻る。

「皆様、ありがとうございます。次が最後の曲です」

「曲名は『Dance』…… 」

僕達が一番大事にしているバラード曲。
愛する人へ気持ちを伝える曲だ。
しっとりと歌い、しなやかに踊る。
気持ちを込めて…。

大好きな君に届くように……。

すると、舞台袖にヴァイオリンが用意されていた。
近くにはクスフォード家の執事マシューがいる。

ルイと目を合わせて、僕達のヴァイオリンを取りに行く。
そしてステージの中央に戻り、澪音を見ると優しく微笑みながらピアノを弾いていた。
ルイと並んでヴァイオリンを構えて弾き始める。

澪音のピアノは止まり、僕達のヴァイオリンの音色が広い会場に響く。

優しく、切ない音色が。

この曲に込めた想いが拡がっていく……。


そして、歓声と共にステージは終了した。
大幅に時間を過ぎたのに音楽祭実行委員の人達にはお礼を言われた。

楽屋で僕達はしばらく言葉もなく座っていた。

「………ねぇ、ルイ。楽しかったね」

「……ああ、そうだな」

「僕、今夜は眠れないかも…」

「そうだな…。そして、僕達の『ツインズ』が受け入れられて良かったな」

「うん……」

僕達は込み上げてくる想いを胸に、目を閉じて微笑んでいた。



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