転生した双子アイドルは伯爵令嬢に恋をする ～一途な恋の音色～

音楽祭のダンスパーティーはそれぞれがダンスや音楽を楽しむというものなので、帰宅する時間も自由だ。

昨日は学園からアリストロ家に向かい、クレア達を待っていたがあまり話をする時間がなかった。
クレアも僕に伝えたいことがあると言っていたので、今日のダンスパーティーのあとで話をすることにしていた。

クレアの希望で学園から近い王都の公園に来て、この公園に咲いている特別な花が見えるベンチに座っている。
秋の涼しい風が通り過ぎる。
クレアに僕の上着を掛けてから話を始めた。

「昨日は迎えに行けなくてごめん、クレア」

「ううん。ルカのせいじゃないわ。あの騒ぎではとても無理よ」

「あんなことになるとは思っていなかったよ」

「とても素敵な歌とダンスだったわ」

「僕達の大切な曲とダンスなんだけど、クレアが見たらどう思うか少し不安だったんだ。…あまり馴染みがないものだったでしょ？」

「…そうね」

「僕がクレアに伝えたいことは、このことなんだ。僕には昔の記憶があって、あれはその頃の曲とダンスだったんだ」

「昔の？」

「そう、僕とルイには大切な想い出があって、それはこの世界に生まれる前の記憶で……」

僕はクレアに前世の頃の記憶があること、あの世界のこと、『ツインズ』のことを話をした。
そして、フラン様が転校してきた時に言っていた『子猫ちゃん』のことや同じ記憶を共有する人がいること、クレアに伝えたいと思っていたことを。

「またどこかで同じ記憶を共有している人に会うかもしれないけど、僕が大切に想っているのは君なんだ。だから本当の僕を知ってほしかった」

「ルカ…」

「前世の記憶があるなんて、変に思ったかな？」

「ううん。納得したわ。ルカは昔から不思議な言葉を言っていたもの」

「え？そうだった？」

「フフッ。そうよ。大切な想い出を教えてくれてありがとう」

「クレア…」

僕はクレアを抱きしめて目を閉じる。

「聞いてくれてありがとう。嫌われなくて良かった…」

ホッと安心して、ため息をつく。

「嫌いになんてなるわけがないわ。だって私、知っていたのよ。あの曲を」

「え！？ あの曲を？」

僕は驚いて目を開く。
そしてクレアの肩に手を添えて顔を見る。

「小さな頃にここで会ったことがあるのよ」

クレアはフフッと微笑みながら僕に言った。