転生した双子アイドルは伯爵令嬢に恋をする ~一途な恋の音色~
夕食も取らず、音楽室のピアノの前にずっと座っていた。
こんな時はピアノを弾けば落ち着くのに!!
今は何も弾けない…!!
鍵盤の蓋を閉めて額を着ける。

「はぁ……」

この先、どうしたらいいのか分からない。
僕の膨らんだクレアへの想いを。

クレアの可愛らしいところが、優しいところが、一緒にいて心地いいところが……。
こんなにも好きになっていたと思い知る。

コンコン!

「ルカ」

音楽室に入り、俯いている僕に近づくルイ。

「…………」

「急に帰ってどうしたの?クレアとケンカでもした?」

「……してない」

失恋したんだよ。

「……僕だってシェイラとケンカする時もあるよ」

あんなに仲良さそうなのに?

「……そうなの?」

「うん。上手くできない時だってあるよ」

ルイでも?

「ルカがいなかったからクレアが心配してたよ。本を持ってきてくれてありがとうって伝えて欲しいって」

「……うん」

クレア、ごめんね。

「今日はルカの好きなマカロンもあるよ。新しい味もあるんだって。あとでルカの部屋に届けてと伝えてあるから」

「……うん」

ルイが買ってきてもらうように手配してくれたのかな?
チラリとルイを見る。

「ありがとう、お兄ちゃん」

クスリと微笑んで僕の頭を撫でてから音楽室を出て行った。
モヤモヤした心が落ち着いていく。
ルイにも嫉妬していたはずなのに、兄の力は偉大だな。

窓を開けると、昼間より涼しい。

「夏も終わりだな…」

しばらく夜空に広がるたくさんの星を眺めていた。
失恋の苦い気持ちはすぐに消えない。
これからも僕はまたきっと、クレアを見てしまうだろう。
僕は眠れない夜を過ごした。

そんな夏が過ぎようとしていた。


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